zinma Ⅲ
それに、だれもが身体を震わせる。
だれかがつぶやく。
「…な……何が起きてるんだ……。」
それはみんなの声なのだ。
さっきまで平和だったのに。
さっきまでフツウだったのに。
膜が空を覆おうとする。
これで、逃げ道はもう……
そこで、
『セルージオ』!!!!
澄み渡った声が世界に響く。
それに街の人たちが空を見上げる。
街を覆うほどの水の塊が、飛んできた。
その塊は、閉じようとしていた膜の隙間からするりと膜の中に入り込み、街に当たる前に水が粒となって散る。
燃えていた建物へと水がばらまかれ、一気に火が消える。
爆発的な水蒸気が街から上がり、煙りのように街全体を覆う。
それにゾンビのようになっていた大男もひるむ。
途端、街を覆っていた膜が消えた。
それに街の人たちが、一気に街の外へと逃げて行く。
ナムも両親に腕を引っ張られるが、なぜか空から目を離せない。
両親に手をひかれながら、ナムは見た。
水蒸気の隙間。
夜空の真ん中に。
美しい、天使を。