zinma Ⅲ



レイシアの魔力は恐れるに値するものだった。



レイシアは山から全魔力を総動員して、風の魔術を使っていた。

片手でシギを浮かせる風を操り、そして自分を飛ばす風に他の魔力をすべて注いだ。



2人は風よりも早く空を翔けた。



色白で、美しいプラチナの髪を持つレイシアは夜の闇の中では輝いて見えた。

地上から見たら、輝く流れ星に見えたかもしれない。


それくらい速く、飛んだ。





やっとミルドナの街が見えてきたところで、街の一角から炎が上がった。

それまで涼しい顔で強力な魔力を操っていたレイシアが、少しだけ眉をひそめる。


「……きましたか。」



そしてレイシアは、ほんの少しスピードを落とす。



そして集中するように目を細める。




その間に、街を静電気でできたような結界が覆っていく。





シギには、さらに膨大な魔力がレイシアに集中するのがわかる。

それはもう考えられない量だ。

ここまでこの短時間で飛んでくるだけで、シギならば全身の魔力が失くなってしまってもおかしくないのに。




そこでレイシアが、シギを浮かしているほうではない左手を、ばっとミルドナへ向ける。


そして、叫んだ。







『セルージオ』!!!!!









世界に、鐘のように鳴り響く。




すると、その声に応えるようにして、自然の魔力がぐんぐん集まってくる。


それらは集まり、すごい大きさの水の塊となり、ミルドナへ飛んでいく。


水は閉じようとしていた膜の隙間から街へと入る。

それとほぼ同時に、レイシアが突き出していた手を握り、左に引く。


すると水の塊が弾け、街に降り注ぐ。



街に広がっていた炎に水が降り、火が消え水蒸気となる。


途端に結界の中の街が水蒸気にあふれたかと思うと、結界が弾けて消える。



レイシアはそれを確認すると、また飛ぶスピードを上げ、ミルドナに向かった。







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