zinma Ⅲ
レイシアは息をつきながら髪をかきあげた。
第二級監獄の廊下には今、何人もの兵士が倒れ伏していた。
レイシアを追ってきた兵士のはずなのだが……
「1、2、3、4…………
35人、ですか。まだまだですねー。」
指を指しながら兵士を数えると、レイシアはそうつぶやいて突然兵士たちの懐をあさりはじめる。すべての兵士から武器を奪った。
ナイフに長剣、槍、そして弓矢。
できる限りたくさんの武器が必要だった。
兵士が気を失うまでは魔術を使うわけにはいかない。極力、人間らしい戦い方をしなければならない。
すべての兵士の分の武器を取ると、かなり山積みになってしまった。
その中から手に持てるだけの武器を厳選し、装備する。
そして倒れた兵士たちを空いている牢獄に押し込み、
『ナグム』
とつぶやくと、鍵穴を炎で燃やして溶かす。
「これでよし。では、行きますか。」
また静寂の戻った廊下を、レイシアはゆっくりと進んで行った。
「おい!!まだ見つかっていないのか!!」
マーガットは苛立たし気にそう叫んだ。
「申し訳ありません!いくつかの部隊を放ってはいるのですが…」
いまマーガットは指令室の中をもう何度になるのかわからないほど往復していた。
一度は自らレイシアを追ったのだが、失敗だった。
どうなっているのか、要塞のいたるところで事故が起きていたのだ。
突然廊下の一部が崩れたり、火の気のないところで炎が上がったり。
おかげで要塞の中はパニック状態になっていた。
今もマーガットの目の前を何人もの上官たちが走り回っている。
「くそ。どういうことだ……!まさかこれも全て奴の………」
「マーガット中将!!!」
腕を組んで考えこむマーガットに、また一人の兵士が駆けてくる。
どうやら彼は連絡係のようなのだが……
「なんだ!また何か……」
「そ、それが、奴の捜索に回っていた部隊が次々に見つかっているんですが……
今のところ全滅です。」