zinma Ⅲ




少し時間は戻って。





レイシアは要塞の屋上にいた。


恐ろしく高い要塞の屋上では、風もかなり吹いている。すぐにでも吹き飛ばされそうな突風を浴びながら、レイシアは涼しい顔で西の空を見つめていた。



手に持ったいくつもの武器を足元に置き、大きく深呼吸する。


そして、

『ディーバ』

そうつぶやくと、また足元の石から女の形をした頭が軋みながら出てくる。


その土の女神に向かって、レイシア軽くあごを動かす。

すると女はゆっくりとうなずき、また床へと消えていく。


女神の魔力が、要塞を抜け、要塞のさらに下にある大地へと移っていくのがレイシアにはわかった。

それを確認して、レイシアは目の前の空間に大きく魔法陣を描いていく。

するとその魔法陣が美しく輝きはじめる。



精霊を呼び出す魔法陣だ。


いま大地へと溶けていった土の女神を媒体として、大地の女神を召喚する。

すごい勢いでレイシアの魔力が失われるのがわかるが、たいしたことはなかった。



ずっと光り続けていた魔法陣が、突然光を失う。




それにレイシアが、要塞の上から地面を見下ろすと、




『ーーーー。』




甲高い女の歌声のようなものが聞こえたかと思うと、レイシアと、そして魔力を持つシギにしか見えない巨大な女が地面から這い出してくる。

要塞の半分ほどの大きさの上半身を地面から持ち上げ、レイシアのほうを見上げる。


レイシアはその女に向かって指を振るう。



それに女がまた地面へと消えていくのと同時、レイシアはまた小さく何かつぶやいたかと思うと突然高く舞い上がる。

風の魔術を駆使し、空を飛んでいるのだ。


一回転して体勢を整え、遥か足元の要塞を見下ろしたところで。




ドンッ!!!!!!




すごい音を放ちながら、地面が大きく揺れる。


地震を起こしたのだ。

かなり規模の大きな地震。



さらに立て続けに、恐ろしい音を出しながら要塞の屋上が崩れる。

さっき第一級監獄の床に、魔術でヒビをつけておいた。

あれだけの地震には、耐えられるはずがない。


崩れがおさまったのを確認して、レイシアはゆっくりと崩れた第一級監獄へと降りていく。


さらにすばやく魔法陣を描き、マーガットの周辺の音を耳に届くようにする。

マーガットの馬鹿らしい演説を鼓膜に感じながら、レイシアは笑った。






< 285 / 364 >

この作品をシェア

pagetop