zinma Ⅲ
廃墟の輝き
第一級監獄があった場所には、空が広がっていた。
このひどい騒ぎとは裏腹に、真っ青に澄んだ、青空だった。
化け物がここに現れたのが夕方。
いつの間にか夜を越え、すっかり日は昇りきってしまっていた。
まだ地平線の上で白い光を放つ朝日は、平和以外の何も意味していないように見えた。
「…………。」
マーガットはその太陽を、目を細めながら真っすぐに見つめた。
軍の教えでは、太陽は直視してはならない。目がくらみ、その後の戦闘に影響が出るから。
だがマーガットはやはり太陽を見つめた。
その視線の先にいたのだ。
あの化け物が。
瓦礫の中でも特に大きな残骸の上に座っていた。
真っ白な光のおかげで、マーガットにはシルエットしか見えない。
だがこちらに背を向け、まるでひなたぼっこするような楽な姿勢で腰を降ろしているのだけはわかった。
「……やってくれたな。」
マーガットがそうつぶやくと、化け物はまったく微動だにしないまま小さく笑う。
「はは。なかなか幻想的な光景でしょう?」
まだこちらを向かない化け物に、マーガットは視線だけを横にずらす。
マーガットの背後には、何百人もの兵士が構えていた。
いま要塞にいるすべての兵士を召集した。足元は悪いが、勝てる戦いだ。
「……ふん。いつまで余裕ぶっているのか。」
「ずっとです。」
「お前は負ける。」
「それはどうでしょう?」
そこで化け物が立ち上がり、ゆっくりと振り向く。
相変わらず張り付いたような穏やかな微笑み。
プラチナ色の、今はひとつにまとめられた髪束からこぼれた後れ毛がふわりと揺れる。
太陽を背後に浴び、右手に弓や剣をいくつも握ったその姿は、戦闘の神のようだった。
その神々しいとしか言いようのないオーラに、いくらかの兵士がたじろぐのを背後に感じながらマーガットは口を開く。
「身ひとつとそれだけの武器でこれだけの兵士を相手にできると思うのか?」
それに化け物が美しく微笑む。
すると。
「さあ、どうでしょう。」