zinma Ⅲ



薄皮が一枚切られ、かすかに血が流れる。


「……や、やめて、くれぇ……っ」


「やめろ?これは殺し合いなのでしょう?実際あなたたちは、私に武器を向けている。ちがいますか?」



剣を構えてレイシアを見つめていた兵士たちの剣先が揺れる。

それを横目でちらりと見つめ、レイシアは剣の腹で目の前の兵士を殴り、昏倒させる。

さらに膝をついて頭を押さえたままのマーガットの首に、剣をつきつける。



「彼を人質に取ります。彼がいなくなればあなたたちは何もできない。彼を救いたければ、かかってきなさい。」


揺れのおさまらない脳に顔をしかめながら、マーガットはゆらぐ視界の向こうのレイシアの横顔を見上げる。


「さあ、どうするんです?」


そのレイシアの声を合図にするかのように、


「か、かかれぇっ!!!」


軍の先頭に立っていた男がそんな声を上げる。




『わあああああ!!!!』


それに何百という兵士が一斉に剣を振り上げ、レイシアへ向かって駆ける。


レイシアの美しい横顔が、笑う。



「それでは、行きますか。」



レイシアは軽く一歩踏み出し、先頭をきって剣を振り下ろす兵士を見つめる。


その剣を下から思いっきり弾き、兵士が思わず離したその剣を掴むと、次はそれを横に回転をかけながら投げる。

ブーメランのように飛んだそのは、後ろにいた兵士たちの持つ槍をいくつか切り倒す。

その間もレイシアは自分の剣で兵士たちの攻撃を受け、すべてを弾き返していく。


顔をずらすだけでひとつ避け、

その剣を弾いて背後の兵士へと軌道を変え、

それに倒れる兵士を掴んではその兵士の身体で他の攻撃を受ける。


どこからか飛んできた数本の矢をすべて薙ぎ払い、その勢いのまま身体を反転させて背後の兵士数人を一文字に切る。



レイシアの動きは止まることがなかった。


まるで放たれるすべての攻撃を予想し、すべてを一連の動作で防御しているようだった。

初めから最後までが、完成された舞の美しい流れの途中で攻撃をしているようで。


すばやく、なめらかに。






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