zinma Ⅲ
街の上空までくるとレイシアは一度止まり、言う。
「やはり暴走しているようです。
『呪い』の力に対し、契約者の能力が足りなかったのでしょうね。」
それからシギのほうを見て、
「あの程度の『呪い』なら私一人でなんとかなります。
あなたは街の人たちの誘導に行ってください。」
一気にそう言うと、レイシアはシギに向けていた右手を街の人たちが逃げていく街道ふと向ける。
すると風がレイシアから離れ、シギを乗せて街道へと飛ぶ。
レイシアはそれを確認すると、ミルドナへと降りた。
街はひどい状態だった。
家はほとんどが崩れるか燃えるかしていて、路地にはたくさんの遺体が転がっていた。
『拒絶』によってすべてを吹き飛ばしながら進んだらしい。
その光景をレイシアはなんの感情もない瞳で一瞥し、契約者の気配がある方へと歩く。
こんな光景を見ても何も感じないのだから、自分も悪魔だな、と思う。
少し進んだところに、それはいた。
どうやらレイシアに気づき、待っていたらしい。
いつもレイシアは2人の師匠から吸収した2つの『呪い』のうちのひとつを使って、『選ばれしヒト』の気配を消している。
しかし今はミルドナに到着したそのときから、気配を解放していた。
『呪い』はレイシアの身体を蝕む。
吸収した『呪い』を使う度に、命が削られるようにレイシアは造られている。
いつも気配を消す『呪い』を使っていることによって、レイシアは毎日命を削られているが、今は解放されている。
ひどく、身体が軽い。
目の前に立っている契約者は、昨日レイシアが撃退したあの大男だった。
たしかにあれだけの悪なら、『呪い』と契約するほどの悪しき心を持っているだろうが、能力はなかったのだろう。