zinma Ⅲ



気づいたときにはすでに、レイシアの周りには数十人の兵士が横たわっていた。


いくら攻撃をしようと、だれ一人としてレイシアに傷をつけることができなかった。


それをマーガットは愕然とした顔で見つめていた。

いつの間にか脳の揺れは止まっていたが、まったく動けない。動ける余裕なんてないのだ。

目の前で円舞を続ける悪魔の美しさから、目が離せなかった。



しかし、


「マーガット中将!!」


だれかに肩を掴まれ、はっと我に帰る。

すると、まだ膝をついたままのマーガットの肩を、額から血を流した一人の兵士が力強く抱いていた。


「マーガット中将!!ここは我々に任せて一度引いてください!!おそらくしばらくすれば王都の軍から応援が来ます!!それまであなたには生きていていただかないと………」


兵士はまだ若かった。

しかしその若い兵士が、真っすぐな瞳でマーガットに向かってそう言っているのだ。


自分は、何をやっていたのか。



「……わかった。だがお前……」


「では行きましょう!!」


兵士はマーガットの肩を支えて立ち上がらせると、レイシアのほうを警戒しながらマーガットを押して駆ける。


かろうじて階段の形を保っているところへ、走る。







「どこへ行くんです?」





さっきまで階段が見えていた視界に、レイシアの微笑みが写る。



「ち、中将!!!早く、早く逃げ……」


そう叫んだ兵士だったが、いつの間にか兵士の横へまわったレイシアが首に剣の柄を叩き込み、昏倒する。


マーガットがそれに腰に隠してある短剣をすばやく抜き、レイシアへ叩き込む。

しかしレイシアはまたそれを首をずらすだけでよけると、マーガットの足を払う。

しかしマーガットもそれをぎりぎりのところで避け、身体を回転させて裏手にレイシアへ短剣を向ける。

レイシアはそれを見越したかのように下から剣で短剣を叩き上げ、飛ばす。

それにマーガットが怯んだところで、すぐさまレイシアはマーガットの胸倉を掴み、地面へとたたき付ける。


「ぐぁ………っ。」

マーガットは衝撃に顔をしかめるが、目の前の光景にすぐ目を見開いた。




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