zinma Ⅲ



さっきまで何百もの兵士がレイシアを囲んでいた場所に立っているのは、初めの数より半分もいないくらいの兵士だった。

半分以上が倒れ、血を流すなり気絶するなり……。



「なっ…………。」


マーガットがそううめくと、怯んだように剣を構えたまま動かない兵士たちに向かって、マーガットに剣をつきつけたままのレイシアが笑う。



「申し訳ありませんが、負ける気がしませんね。
私はこの世で最も誇り高く力のあった兵士2人から武術を教えられた。

本当の闘いの世界を知らず、のうのうと生きてきたあなたたちに負けるなんて、有り得ませんよ。」



それに兵士たちのどこからか、小さな声が響く。


「……ば、化け物だ…。本物の……や、やっぱり、あんな化け物に、手を出すべきじゃ、な、なかったんだ………。」




それにレイシアの冷たい瞳が動く。



「化け物?私は今のところ人間ですよ。今のところ、ね。」


そこでレイシアは剣をマーガットから離すと、兵士たちのほうへ左手を掲げる。


「何をする気だ………。」


マーガットが低くそううめくと、レイシアはにっこりと微笑む。



「特別に、あなたたちに本物の化け物を見せて差し上げます。ずっとあなたたちが探していた、化け物をね。」


そう言ってレイシアが不気味に笑みを深めた瞬間。




レイシアの足元から風が巻き起こった。


レイシアの髪を逆立てながら、まるでレイシアを包むように回っている。



それにマーガットは生唾を飲み込んだ。


そこでレイシアが、掲げていた左手をすっと横へ動かす。



途端、


「う、うわあああああ!!!」



兵士たちの背後に、突然炎が立ち上る。

兵士たちを捕らえるように横へ広がる炎は、あっという間に兵士たちの逃げ場をふさぐ。


その炎を、信じられないといった表情で振り向いて見つめる兵士たちの前に、さらに信じられない光景が現れた。





炎の中から、女が現れたのだ。


普通の女ではない。

全身が炎でできた、女。

逆立った髪のような炎。

しなかやかな肢体が、ゆったりと歩いて現れる。






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