zinma Ⅲ
「な、なんなんだあれはぁあ……!」
「こんな、こんなことが………」
「もうだめだ…殺される………」
すべての兵士がその光景に絶望していた。
女は炎でできた槍のようなものを持って、その場にたたずんでいた。
「…き、貴様、やはり………」
マーガットがレイシアをにらみつけながらそうつぶやくと、レイシアは横目でマーガットを見つめ、また微笑む。
レイシアが掲げた左手を軽く振るう。
するとそれに反応して、炎の女が槍を構える。
「や、やめろぉぉお!!」
「いやだ!死にたくない!!!」
そんな兵士の声を無視して女がすごい速さで駆ける。
しかし兵士へ向かってではない。
兵士たちの横を駆けて行くのだ。
その女の走ったあとには、恐ろしい炎が上がる。
女がもとの場所へ戻って炎の中へ消えたときには、兵士たちは炎に囲まれてしまっていた。
「うわあああああ!!」
「あ、あつい!!!」
「やめてくれぇ!!!」
炎はどんどん強まり、兵士たちへとじりじりと迫っていく。
「貴様……っ!汚い手を……!!」
マーガットが唇を噛み締めながらそううめくと、レイシアはマーガットのほうに顔を向けて冷たく言い放つ。
「汚い?あなたたちがずっと求めていた力を見せてあげたんではありませんか。10年前の拷問はこれを引き出すためのものでしょう?」
「……大量虐殺の化け物が…!!」
「はは、何度同じことを言うんです?無駄な問答をする前に、彼等の命請いをしたらどうです?」
「甘いわ!!貴様が正体を現した以上、貴様は我々軍の固有兵器とされる。じきに王都から応援が駆け付け、貴様を捕獲する。我々がここでどうなろうと、貴様は逃げることなどできないのだ!!!」
「だから彼等を見捨てると?」
「戦って死んでこその兵士だ。」
「なるほど。その考えはどうかと思いますが、冷静な判断力としては満点でしょうね。」
そこでレイシアは炎の上のあたりに向けて手を掲げ、目を細める。
するとその視線の先に突然小さな水の固まりが生まれ、徐々に大きくなっていく。
そして炎すべてを覆うほどになったところで、レイシアが手を下へ動かした。
水はその手に合わせて下へ落ち、炎にかかる。
ジュワアッ!!!
爆発的な水蒸気が生まれたかと思うと、炎が一気に消えて、気絶して倒れた兵士たちだけが残った。