zinma Ⅲ




「………ふん。結局は復讐のためではないか。」


「はは、まあ複雑な話なんですが……」



レイシアはそう言いながらマーガットの目の前にしゃがみ、足を投げ出してくつろぎ始める。


「…なにをしてる?」


「何って………見てのとおり休んでるんですよ。」


「だから、なぜ今休むんだ。貴様はいつでも………」


「私はいつでもあなたを殺せますよ?

だから休んでるんです。あなが今どう動こうと、私はあなたを殺せる。あなたがいつ死ぬかは私の手中にあるんですから、私が今なにをしようと自由です。」


「………。」


「あなたも残りの人生ゆったり過ごしましょうよ?葉巻でも吸いますか?」



そう言ってどこからか葉巻を取り出して笑うレイシアに、マーガットは唇を噛む。

確かにいまマーガットが動いても、状況変わらなかった。

今のレイシアにとって、隣にいるマーガットは生死の関係ないただの物体でしかないのだ。



「私の話を聞く気はありますか?」


「……あるはずがないだろう。」


「はは、まあいいんですが。
勝手に話させていただきますね。」


レイシアは首の後ろでまとめていた髪をほどくと、話し始める。



「私にはもう感情っていうのがないんですよ。だから今回のことも、復讐のようでありながら、あなたたちを恨んだりしてはいない。不思議でしょう?」


「あ?貴様なにを………」


「確かに昔はあなたたちを死ぬほど憎みましたが、今はなんとも思っていません。いつかここを壊したかった。ただそれだけです。」


「……復讐よりも質が悪いな。」


「はは、そう思います?まあ、ある意味そうですね。」



そう言ってレイシアは突然目の前に倒れている兵士たちを指差す。



「例えば、あれ。さっき私は確かに彼らを助けましたが、別にいま殺せと言われればいつでも殺せる。殺しますか?」


「なっ…!貴様………」


「はいはい、わかってますよ。ですが殺せるのは事実です。ただ、意味が無いから殺さないだけ。」



レイシアの目は澄んでいた。



底の見えない深い瞳が、真っすぐにマーガットを捕らえていた。





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