zinma Ⅲ
サムラ
一難と一難
変わり果てた要塞の近く。
岩影に3人は座っていた。
「…………師匠。」
そのうちの一人が顔を上げてそうつぶやいた。
首の後ろでまとめられた紺色の長髪を揺らし、レイシアを見つめる。
「お待たせしました。」
レイシアはその岩影へ近寄りながら、そう言って微笑んだ。
それに岩影から2人が顔を出す。
金髪と碧眼の男と、赤い髪と瞳の若い少女。
その2人の表情が妙で、レイシアはほんの少し眉をひそめる。
それを汲み取ったように紺色の髪の少年、シギが立ち上がり、
「師匠、あの………」
とつぶやき、場所を移るようにうながす。
しかしそれをレイシアは制し、少女の方を向いて困ったように微笑む。
「……それで、どこまで聞きたいですか、ティラさん?」
何もかもを悟ったようなそのレイシアの反応に、シギも金髪の男、ダグラスも驚いた顔をする。
しかしティラだけは真っすぐな目でレイシアを見上げ、言う。
「全部よ。全部。
はじめから最後まで、全部話して。」
それにレイシアはまた困った笑みを浮かべたのだった。
「……すみません、師匠。
まさか彼女が聞いているとは気づかずに………迂闊でした。」
シギが申し訳なさげに目をふせてそう言うので、レイシアはたき火用の槇を拾いながらにっこりと微笑むだけで返した。
3人とレイシアが合流したのが昼前。
今は夕方で、4人は要塞を無事に抜けた街道をしばらく歩き、街道から外れた小さな森で野宿の準備をしているところだった。
「まあ、あの状況では仕方ありません。
それにあれだけ暴れれば、ただの旅人だと言っておくのにもどの道無理があったでしょう。」
レイシアとシギは今槇を集めるために、野宿する場所から少し離れたところを歩いていた。
あのあとレイシアは、ティラに自分たちのことを話した。
レイシアはある目的があって旅をしていて、人にはない力があるということ。
シギはルミナ族の最後の一人だということ。
ダグラスは今は軍を出たものの、元々は軍の大佐であったということ。
そして、自分たちが今西に向かっているのは、『呪い』を探しているからだということ。