zinma Ⅲ
ナムは今年で18になる、茶髪に茶色の瞳をした少女だ。
そのナムとあまり変わらないような年頃の少年の顔が、目の前にあった。
フードを取ると同時に、隠れていたプラチナ色のやわらかそうな髪の毛がふわりとこぼれる。
瞳は黄緑と水色の混ざったような不思議な色をしていて、その目を優しげに細め、微笑む。
「よろしくおねがいします。」
その微笑みがとてもきれいで、ナムは妙にどぎまぎしてしまう。
「か…かしこまりました。
あ、えっと、長旅ならお腹すいてませんか?
食堂もやってますので、お部屋の用意がすむまでゆっくりしててください。」
そう言って食堂の空いた席へと促すと、もうひとりの旅人もフードをとる。
青年。
また同じ年頃の青年だ。
金髪の青年とは正反対の印象を与える、無表情な顔。
紺色の真っすぐな長髪を、きれいに首の後ろで結んでいる。
金色の切れ長の瞳は、無表情なはずなのになぜか温かみを感じさせる。
ひどく整った顔の旅人にナムは驚くが、それを顔に出す前に慌てて部屋の準備に走った。
食事を終え、ひしめき合っていたたくさんの客も食堂から出て行き、宿に泊まる客数人だけが食堂にぽつりぽつりと残っていた。
街でも好かれている気のいい宿屋の夫婦は、その残った客と談笑しながら豪快に笑う。
ナムが部屋を準備して食堂に戻ると、先ほどやって来た若い旅人も、すっかり主人と仲良くなっていた。
「はっはっは。若いねぇ。
若者の男2人で旅なんてむさくるしくないかい?」
そんなおどけた質問にも金髪の青年はにこにこ笑いながら答えている。
「はは。そんなことありませんよ。」
それに長髪の青年も薄く微笑んでその話を聞いている。
「もう、あんた。
馬鹿な質問ばっかするもんじゃありませんよ。」
夫人が主人にそう言いながら大きく笑う。
ナムもテーブルに残った食器を片付けながら笑う。