zinma Ⅲ



大男はゾンビのように全身を脱力させており、目も焦点が合っていない。



「これはこれは、ひどい状態ですね。」


とレイシアがおどけるように言うと、大男からまた結界が放たれる。


それがこちらへ迫ってきて、レイシアを『拒絶』しようとする。



それを見ながら、レイシアが言う。




『リィラ』

『セルージオ』

『ナグム』





その言葉に合わせて、レイシアのそばに風の女神、水の女神、炎の女神が現れる。

もちろんその姿は普通の人間には見えないのだが。



それを確認して、レイシアは肩をぐるぐる回しながら、言った。



「さて、始めましょうか。」













シギは街の門のところに降り立った。

突然現れた青年にだれもが驚いた顔をする。


しかしそれを気にすることなく、シギが叫ぶ。

「ここは危険だ!
とにかくできるだけこの街から離れて!
王都の方へは行かないように!」



それにやっと街の人たちが動き始める。

だがパニックになった街の人たちは、街道を進み王都へ向かおうとする。


それにシギは一度舌打ちをすると、人混みの先頭のほうへと走り、言う。

「王都へは行ってはだめだ!」


すると街の者はもう涙目になりながら、

「し、しかし………」


それを遮り、シギは皆に聞こえるように叫ぶ。


「あの化け物はこの街に報復をしようとしているんです!

あなたたちが王都へ逃げればあいつも王都へ行くでしょう!

いま王都の軍が応戦しています!

もう絶対に安全ですから、いまは森に隠れて!」


それにどこからか、

「なぜもう王都の軍が来ているんだ!戦争なのか?!」

という声が上がり、また街の人たちがパニックになり始める。



「静かに!!!!!!」



シギが信じられない大声を出す。

それに一瞬静まるので、その隙にシギがまくし立てる。




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