zinma Ⅲ
ティラは細く、しかし長く長く息を吸う。
静かな瞳でこちらの出方をうかがうように立っているシギをにらみつけ、息を吐く。
「………ひゅっ!」
勢いよく息を吐いて飛び出し、一気に間をつめた。
「やあっ!!」
身体全体を回転させるようにして、双剣を突き出す。
しかしシギはそれをかがんで避けると、そのまま片足を跳ね上げて双剣を握るティラの手を狙う。
しかしティラは回転の勢いを殺さないまま双剣の軌道を変え、下からすくい上げるようにする。
とっさによけたシギの後れ毛をかすって流れた双剣は、数本のシギの髪をぱらぱらと落とすだけで空を切った。
「ちっ!」
ティラは舌打ちと共に、上に上げた双剣を握りしめ、前へと突き出す。
両手を交差させるようにして突き出した双剣は、確実にシギを間合いに捕らえていた。
これで終わりだ。
しかし。
ザンッ!!
勢いよくティラが切ったのは、大量の土だった。
「えっ!!」
いつの間にか、シギとティラを遮るように現れた土の壁が、双剣に真っ二つにされてバラバラと崩れる。
その向こうには、何かきらきらした紋様を空間に描くシギがいて。
「え………な、なに………」
あの要塞で見たのと同じものだった。
また幻覚なのか……?
目を見開いてティラが隙を作ったうちに、シギはもう紋様を完成させる。
一瞬きらめいたかと思うと、ティラの回りの地面がまるで沸騰するようにボコボコとうねる。
「なんなの?!」
ティラがそう叫ぶと同時に、無数の木の根が地面から勢いよく飛び出す。
シギがまだ浮かんだままの紋様の前で、両手を勢いよく握りしめる。
その動きに合わせて、ティラに向かって木の根が伸び、ティラを捕らえようとする。
「くっ…………!」
ティラは双剣を握り直し、勢いよく回転する。
まわりに近づいてくる木の根をつぎつぎに切り、回転を止めることなく切り続ける。
このままだと、まずい。
まったく状況が読めない状態での戦闘は危険……………
「ティラ!!」