zinma Ⅲ
突然響いた声に、ティラもシギも一瞬動きを止めて視線をそちらへ向ける。
「シギか?いったいどういう……」
わずかに息を切らして走ってきたのはダグラスだった。
「……………ちっ!」
ティラはもう一度自分に勝を入れ、双剣を振るう。
ティラと同様、ダグラスにシギが気を取られているうちに、一瞬動きの止まった木の根を根こそぎ切り飛ばす。
「なっ!」
シギが気づいたときには、ティラはすべての根を切ったところだった。
「…………あたしの勝ちよ。」
小さくそう言うと、ティラは双剣をすばやく腰の後ろへしまい、踵を返す。
「ティラ!!!!!!!」
突然ダグラスが地面を揺るがすほどの怒号を上げる。
ティラが思わず身体をびくつかせ、振り向く。
すると、状況をすべて悟ったように、顔をしかめて立つダグラスがティラをにらみつけていた。
しかし、
「ティラ。落ち着け。」
そう言ったダグラスの声は、いつもの穏やかなものに戻っていた。
「絶対に大丈夫だ。俺を信じろ。」
真剣な、しかし温かみのある瞳でダグラスがティラを真っすぐに見つめる。
それにティラが、
「………っ。」
泣きそうに顔を歪め、ダグラスを見つめる。
しかし、うつむいて唇をきつく唇を噛み締めたかと思うと、絞り出すような声を出す。
「……………の。」
小さすぎるその声に、ダグラスもシギも顔をしかめる。
さらにシギはダグラスの身体の影で、小さく魔法陣を描いていく。
そこでティラが顔を上げる。
その顔を見て、ダグラスもシギも思わず息を飲んだ。
そのティラの顔は
涙でぼろぼろに歪んでいて。
「ダグラスも兄さんも………
傷つけたくないの………っ。」
ティラはそう言うと、勢いよく踵を返し、森の中へと駆けて行った。