zinma Ⅲ
サムラは静寂につつまれていた。
久しぶりに帰った故郷は、さらに目茶苦茶になっているような気がする。
ティラは雑草が生えた石畳の道をゆっくりと歩いた。
こぼれそうになる涙。
悔しくて仕方なかった。
どの家ももうぼろぼろで、ひとけがない。
街の人は家から一歩も出ることなく、まるで天敵から身をひそめるようにひっそりと暮らしている。
通り過ぎていく家はすべて慣れ親しんだものばかりで、幼なじみの住む家もある。
しかしそのうちのいくつかは焼き払われ、崩れ落ちていた。
ティラは唇を強くかみしめ、涙がこぼれないように家まで駆けた。
そのころ、3人もサムラの城門へたどり着いていた。
城門には警備がついていたのだが、ティラの後を追ってみたところ抜け道を発見した。
一部崩れて穴のようになっている城壁をくぐり抜け、3人はサムラへと入った。
間近で見る街の様子は遠くから見たときよりも酷かった。
まるで山賊にでも襲われたかのようにぼろぼろになった街には、まともな人の気配はほとんどない。
その光景にダグラスが悔しげに顔をしかめる。
「………ダグラスのせいじゃない。」
横からかかったその声にダグラスが顔を向ける。
するとシギが金色の瞳でまっすぐにダグラスを見つめて言う。
「これは起こるべくして起こってしまった。
愚かな領主と、大飢饉。
しょうがないことなんです。」
淡々とそう言うシギに、ダグラスは苛立たしげに頭を豪快にかく。
「………くそ。だが………」
「今あなたがいま責を負っても、状況は何も変わらないでしょう?」
ダグラスの言葉を遮って、次はレイシアが口を開いた。
シギとは打って変わったやわらかい物腰で続ける。
「あなたは確かに軍にいて、こういった街の状況を知れる立場にはいました。
でもそれは過去の話です。
あなたが今できることをやればいい。」
それにダグラスが顔をゆるめるのを確認して、レイシアは微笑む。
「あなたはティラさんを助けるんでしょう?」
それにダグラスも微笑んでうなずいたのだった。