zinma Ⅲ
街を進んでいくと、ひとけのない家の窓の隙間から、わずかに人の視線を感じた。
3人は横目でそれを確認する。
崩れ、ぼろぼろの家のわずかな隙間から、確かに人がこちらを覗いていた。
よく確認してみると、ほとんどの家からそういった視線がそそがれていて、それはひどく…………
「師匠。」
「なんです?」
「とても不気味です。」
「はは。そうですね。」
軽口をたたきながらも、3人は周りを警戒していた。
街のいたるところからそそがれる視線には、明らかに敵意が感じられる。
当たり前だろう。
彼らにとっては、旅人というのは砂漠の中のオアシスと同じ。
このひどい街の中で生き残るための餌なのだ。
旅人を捕まえて、領主に差し出せば食料が与えられる。
今は3人の様子を伺っているようで何もしてこないが、いつ襲われるかわからない。
だが下手に慌てたりすれば、それこそ逃げる前にすぐに捕まえようと町中の人間が襲い掛かってくるだろう。
迅速に、慎重に。
ティラを保護する必要があった。
「………レイシア。実家に帰らなくてもいいのか?」
少しおどけるように言うダグラスに、レイシアは小さく笑う。
「はは。なんの話でしょう。」
そこで3人の歩く道の先に、一人の衛兵が現れる。
それに3人がとっさに路地へと走る。
「……………。」
息をひそめて衛兵をのぞく。
ここで捕まってしまえば、即に領主のところへ連れていかれて人買いに売られてしまうだろう。
3人が緊張した面持ちで待つ。
そこで衛兵が3人の隠れている路地の前を横切っていくが……
「……………ああ、そういうことですか。」
レイシアは苦笑混じりにそうつぶやいた。
シギとダグラスはそれに首を傾げた。
衛兵には特に特徴はないのだ。
ただ、静かに歩みを進めていて。
「師匠、何が…………」
シギがそう言いかけたところで、
「だれだ!!!!」
通り過ぎたはずの衛兵が駆けてくる。
「れ、レイシア。」
「はい、わかってますよ。
ではみなさん、大きく息を吸ってください。」
『え?』