zinma Ⅲ
まだかすかに火の残る街の空は、真っ赤に染まっている。
「…人の心ほど怖いものはありません。
何が起きるか…予想できませんから。」
独り言のようにシギはそうつぶやき、ナムのほうを見る。
なるべく優しく微笑み、言う。
「でも、もう本当に大丈夫。
師匠が、なんとかしてくれますから。」
それにナムはまだ少し不思議な顔をしていたが、すぐに安心しきった顔になる。
「そう…ですね。
レイシアさんは、強いから。
助けに戻ってきてくださって、ありがとう。」
それにシギはうなずき、ナムも避難させる。
そして街の中へと、走って行った。
街に入ると、すぐにレイシアのいる場所がわかった。
街の外からもわかるほど、異常な量の魔力を放出していたから。
そこにシギが辿り着くと、ちょうど戦闘が終わったところだった。
レイシアのまわりには、風や火の粉や水の塊がふわふわと浮いている。
大男はも結界を張る余力もないように、ぐったりと倒れている。
その大男に向かって、レイシアがゆっくりと歩く。
レイシアの瞳が、煌々と輝いている。
一歩レイシアが進む度に、レイシアの身体がどんどん青白く光り輝く。
大男の前まで来たころには、レイシアは光り輝く『選ばれしヒト』の姿になっていた。
風になびくようにうねうねと動くプラチナの髪が、眩しく光る。
レイシアが、右手をゆっくりと上げ、とん、と大男の額に軽く触れる。
途端。
どくん。
地面が、脈打つような感覚になった。
どくんどくんどくんどくん。
レイシアを中心に、地面が波打つ。
これが現実なのか、それとも魔力を持ったレイシアとシギにしかわからないのか。
ただ確かなのは、目の前の大いなる存在に、シギは動けなくなった。