zinma Ⅲ
「………もちろん、その可能性もあります。」
レイシアの言葉に、ダグラスの顔が一瞬にして明るくなった。
「じゃあ、じゃあ今すぐその領主の『呪い』を………」
「ですが確かではない。」
思わず明るい声で言いながら立ち上がったダグラスを、レイシアは静かに制した。
「万が一ティラさんのお兄さんが領主とは別の『呪い』を有した契約者だとして、その『呪い』が人の記憶を消し去ってしまう能力のあるものだとしたら。
ティラさんも、お兄さんも非常に危険です。
優先順位はそちらのほうが先です。」
ダグラスはそれに黙り込み、拳を握りしめてうつむく。
シギはしばらくそのダグラスの様子を見つめ、静かに立ち上がって置きっぱなしの荷物を拾う。
レイシアも静かに立ち上がって、自分の荷物をシギから受け取りながら路地を出る。
「…………ティラのところへ急ごう。」
後ろから聞こえたダグラスの低い声に、レイシアは小さく微笑んだ。