zinma Ⅲ
「ああ……ああ……よかった…。
神様はあたしを見捨ててはいなかった………。ああ…ありがたい……。」
独り言のようにぶつぶつとつぶやきながら3人に近寄る女は、焦点の定まらない瞳で3人をなめるように見つめた。
「こんな………こんな若い旅人なら領主様も………」
すでに3人の目の前までたどり着いた女は、そう言ってレイシアの胸元のコートを掴む。
「師匠……っ!!」
それにもまったく動かないレイシアに、シギが肩を強く掴んだところで、レイシアがゆっくりと右手を上げる。
そしてゆっくりと、レイシアを掴む女の手をその右手で包み込み、握る。
「………いえ。私は旅人ではありませんよ。」
静かにそう言ったレイシアに、女がおそろしく顔をしかめる。
「うそだ!!!あんたらはこの街の人間じゃない………!あんたらを……あんたらを連れて行けばあたしは…………」
そこまで言ったところで、あたりの家から続々と人が出てくる。
いずれも落ち窪んだ瞳をレイシアたちに定めて、全員がロープやら武器やらを持っていた。
それに気づいているのか気づいていないのか、女はレイシアをさらに強く掴みながら言う。
「大人しくあたしに着いて来るんだ………!そうすれば……あたしはまだ生きられる…………!」
ゆっくりとこちらへ近づいてくる何十人もの住人を警戒しながら、シギとダグラスがレイシアへと近寄る。
「……ちっ!あと少しというところで………」
「いったい師匠は何を……」
ダグラスとシギが小さくそう言って懐から武器を取り出そうとしたところで、
「動くな!!!動くんじゃない!!あんたらもあたしに着いてくるんだ!!無駄な動きをしたら……」
レイシアを掴む女がそう叫んだのを遮り、近寄ってきていた住人から声が上がる。
「1人俺にゆずれ……!あんた一人で3人も連れていくのは許さない………」
「1人で十分だろう!俺に……」
「だまれ!!!!これはあたしの獲物だ!!!!」
そう叫ぶと、女は懐からナイフを取り出してレイシアの手を払うと、ナイフを首へとつきつける。
「………いいね。あたしに着いて来い。でないと……」
「リール夫人!!!いい加減にしろ!」
女の言葉を遮って、どこからか聞こえた声に、シギが思わず目を見開く。
「リール?え………」
しかしそのシギのつぶやきをよそに、女にむかって石が投げつけられる。
女がそっちへ目を向けたころには石がもう女の頭へと当たろうとしていて。
「危な…………!!!」
シギが思わず手を出すが、間に合うはずがなかった。
しかし。