zinma Ⅲ



真っ白な世界にレイシアは立っていた。




吸収するときはいつもそう。



真っ白な世界に立ち、その『呪い』を形にしたものを、破壊する。



レイシアがきょろきょろと首を動かすと、そこにそれはあった。







真っ黒な人間。



いや、どうだろう?

正確には、人間の形をした、影の塊のようなものだ。



山で見たミイラのように、あぐらをかいて座っている。





どうやらこれが『呪い』の正体らしい。



レイシアは手を振るう。

するとレイシアの手に、金色の剣が現れる。

レイシアの中の『選ばれしヒト』の分子でできた剣。



その剣を握った途端、頭に声が鳴り響く。




タベヨウタベヨウタベヨウタベヨウタベヨウタベヨウタベヨウタベヨウタベヨウタベヨウタベヨウ





もう慣れたその声に、レイシアは苦笑いを浮かべながら、

「はいはい、わかりましたから。

ちょっと静かにしていただけませんか。」

と言う。


もちろんそれで声が止むわけではないのだが。




そしてレイシアは影へと歩み寄り、とす、と簡単に剣を突き刺す。


それだけでは、影は微動だにしない。


それにレイシアは、最後の呪文を唱える。














シギが見ている前で、地面がどんどん速く脈打っていた。


そこでずっと動かなかったレイシアが、わずかに口を開く。


すると。









『イルト』











レイシアが、小さくつぶやく。


しかしその声は、人間を平伏させる力がこもっている。

その小さな声の威圧に、

「ぐ………。」

とシギは思わずうめく。



しかしその瞬間、大男から真っ黒な煙が吹き出す。

地面の脈が止まり、その脈が大男へと移ったかのように煙が脈打ちながら溢れ出す。


それにレイシアが、やっと動く。


男の額から手を離し、少し後ずさる。





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