zinma Ⅲ



そのまま、まだ『選ばれしヒト』の姿として光り輝いているレイシアが、すっとシギを見る。



するとシギの心臓が、突然大きく跳ねる。


「………っ!」


声にならない悲鳴をあげ、シギは膝をつく。



レイシアはまだまっすぐにこちらを見ている。

その間にも、大男から吹き出す真っ黒の煙はレイシアの中へと吸い込まれていく。

シギの心臓も、異常な強さで脈打つ。



シギの中の魔力が、『呪い』が、反応しているのだ。

シギはついに膝立ちもできなくなり、倒れる。

心臓が暴れ、汗が吹き出す。



しかしそこで、レイシアがシギから目をそらす。


どうやら、大男の『呪い』を吸い終わったらしい。

すとん、と、レイシアも膝をつく。


それになんとか首だけ動かしてシギがレイシアを見ると、レイシアは苦しそうに胸を押さえ、俯いている。


肌が足元から徐々に、青白く光るものから、普通のものへと戻っていく。



最後の髪の毛から輝きが消えたとき、レイシアは地面に手をつく。


それになんとか立ち上がったシギが、慌ててかけよる。

レイシアの背中を触り、驚いて思わず手をひっこめる。


レイシアの背中は、異常な大きさで、脈打っていた。

そしてうつむき、たれたプラチナの髪の隙間から除く首に、真っ黒な血管が浮かんでいる。


よく見ると、顔や首、腕、足にも真っ黒な血管が浮かび、それが大きく脈打っているらしい。



シギは驚き、ただそれを見守っていると、徐々にその脈が小さく静まっていく。

それと同時に真っ黒な血管も消えていき、最後の一本が消えたとき。


「………かはっ……」


という声をあげ、レイシアが倒れる。



シギが今度こそレイシアに駆け寄り、声をかける。


「師匠。」


するとレイシアは、薄く微笑み、

「今回は、お腹いっぱいです。」


と言い、立ち上がる。



ふらっとよろめくのでシギが駆け寄ろうとすると、レイシアは片手でそれを制す。




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