zinma Ⅲ
「ふぅ……」
という声とともに、レイシアは息をつく。
空を仰ぎ、額にたまった冷や汗をぬぐう。
そして、まだレイシアの周りを浮いていた火花や水や風を見て、気づいたように手を軽く振るう。
すると魔力ははじけ、消える。
それを見てから、
「師匠。」
と呼ぶと、レイシアはいつもの微笑みでシギを見る。
それから大きく伸びをして、言う。
「んー。少し疲れましたね。
とりあえずこの状況を片付けないと。
街の人たちは?」
と聞くので、シギは応える。
「森に避難しています。
この場については一応適当な説明をしておきました。」
そう言ってシギは、街の人たちに言っておいた嘘を言う。
「ちょっと苦しい嘘ですかね?」
とシギが最後に聞くと、レイシアは笑いながら、
「いえ、その場で思いついた嘘にしては上出来でしょう。」
と言い、あごに手をあて考えるように目を閉じ、
「とりあえず、大男は軍が撃退し、軍はその仲間を追うためにそのままさらに北へ向かった、ということにしましょう。
この男に関しては、適当な商人を買収してどこかの街に連れて行かせるとして……」
とまで言い、目を開きまわりを見回す。
火はレイシアの魔術により消されたが、街はひどい有様だ。
「ほんとに……やってくれましたね。
これは復旧までかなり時間がかかるでしょう。
とりあえず復旧の指示をして、私たちは急いで次の街に行きます。
そこで王都の軍の振りをして情報を流して、当分ミルドナに人がやって来ないようにしなければ。」
それにシギはうなずき、街の人たちを呼びに行こうと踵を返すが、
「ああ、ちょっと待ってください。」
レイシアに引き止められるので、足を止める。
それに振り返ると、
「やっぱり私たちはこの街にしばらく残りましょう。
ここの復旧の指示をある程度したほうが良いかもしれません。
ですから、私たちの変わりに隣町へ情報を流す商人を用意してください。」