zinma Ⅲ
運命の交差
「ブルゴア様。」
廃れた街の中で、唯一異常な輝きを放つ建物。
宮殿と言っていいほどの大きさの建物。
その中の、玉座のような場所に彼は座っていた。
純潔のキニエラ族になればなるほど、美しいと言われる金髪。
王家の血縁にある彼は、もちろん美しい金髪を持っていた。
しかしその姿は、美しいとは言えなかった。
醜く太った身体は玉座からだらしなくはみ出ていて、40代の後半と見える年の顔は、歪んでいた。
「なんだ。」
くぐもった低い声。
広い部屋の隅に立った一人の兵士が、静かに声を出す。
「ブルゴア様。
あのルーク家の息子の姿は、まだ確認されていません。」
「何をしておるのだ!!!!
早く見つけだせ……!」
「しかし、ブルゴア様。
リール家の息子の姿は確認いたしました。」
「リール家の息子?」
片眉を上げて、ブルゴアが聞く。
「はい。
数年前に、奇っ怪を起こした子供が、帰ってきたようです。」
「………ああ、あいつか……。」
ブルゴアは下品ににやりと笑った。
あの子供を王家に差し出したおかげで、自分の地位はさらに有利になった。
侯爵から公爵へと爵位も上がり、たくさんの金も与えられた。
「……ふん。のこのこと帰ってきたか。
また奴を差し出せば、さらに私の地位は上がる。
奴に感謝しないとな。」
それに兵士は一礼して、去っていく。
その背中を見つめてから、ブルゴアは強く瞳を閉じて、神経を集中させる。
この街の中に、妙な感覚があるのだ。
同類。
同じく、神より力の与えられた人間がいる。
それがルーク家の息子であることは確かだった。
「ん?」
なぜか、今日はもうひとつ妙な感覚がある。
嫌な感じだ。
同類とは違う、嫌な感じ。
「…………なんだこれは。」
もしかしたら、あのリール家の息子かもしれない。
そこでブルゴアは笑う。
ならば、ちょうどいい。
これで手っ取り早く、金のなる木を捕まえられる。
「明日、街に出るか。」
そう言ってブルゴアは、笑った。