zinma Ⅲ
そこで、ふいにマイルがレイシアの向こうからシギの顔をのぞき込む。
真っすぐな瞳にシギも思わず見つめ返していると、
「………これが『つなぎ』か。
それにしても、若いなあ。」
と独り言のようにつぶやくので、シギは首を傾げる。
それにレイシアは何かわかっているかのようにシギのことを横目で見て、
「彼のことも…………」
「うん。僕らには昔から伝わってるよ。」
なんて2人でつぶやきあう。
それにさすがにシギは怪訝な顔にしかめ、
「師匠。何を………」
と聞こうとするが、その言葉をマイルが口を薄く微笑ませて遮る。
「君は『白呪の民』なんだろ?」
聞きなれない言葉に思わず目を丸くする。
ハクジュ………?
それにさっきの、ツナギとかいう言葉。
師匠は何か知っているのだろうか?
そう思ってレイシアのほうを見ると、レイシアはそれに気づいて、ひとつうなずいて言う。
「『白呪の民』っていうのはルミナ族の別名ですよ。」
「ルミナ族の?」
驚いて目を見開いていると、次はマイルが答えてくれる。
「そ。僕たち『呪い』の中では君たちのことを『白呪の民』と昔から呼んでるんだよ。
太古の昔、『呪い』が生まれたときから『呪い』は悪の存在だった。
でも君たちルミナ族は神の側へ寝返った。
だから『呪い』は、君たちを『神の犬』、つまり『選ばれしヒト』という白い悪魔の側の『呪い』として、昔から怨んでるんだよ。」
あっさりとそう言い放つマイルに、思わず顔をしかめた。
それにマイルは小さく声をあげて笑うと、にこにこと微笑んでシギを制するように片手を上げる。
「あはは。ちょっと今のには語弊があったかな。
ルミナ族に関しては、僕たちの『呪い』が神に拘束され、利用されたと言ったほうが正しい。
だから僕たちが怨んでるのは神と人間のほうで、『魔術』の『呪い』にはむしろ同情してるよ。」
それにシギはさっきよりも顔をしかめ、マイルから視線を外してそっぽを向く。
「『呪い』に同情されてもうれしくありません。」
その態度にマイルは一瞬驚いた顔をして、噴き出して笑った。
「あはは!それはあまりに偏見に満ちた言葉だなあ。
ま、人間なんてそんなものか。」
まだくすくすと笑いながらそう言うと、マイルはまたブルゴアのほうへ目を向けた。