zinma Ⅲ

悲哀と前進




レイシアとシギの指導のおかげで、ミルドナの街の修復は着実に進んでいた。



被害者の埋葬から、道路や建物の修復、さらに被害を受けた店舗への援助など。




レイシアとシギはミルドナに1週間滞在した。


街を出る日、街中の人が別れを惜しんだ。



「ほんとに行くのかい?」

「感謝してもし足りないよ。」

「あんたたちのおかげてやってこれた。」

「行かないで。」

「また遊びに来なよ。」

「街のことはまかせろ。」




様々な別れの声にレイシアは笑顔で答えた。

シギは小さく礼をしながら、あいさつをする。


最後にミルディー亭の3人が待っていた。


今度は夫婦2人して号泣していた。


その2人をなだめていると、

「レイシアさん。シギさん。」

とナムに声をかけられる。



ナムはいつものようににこにこと笑い、

「父さんと母さんのことは任せてくださいな。

やっていけますから。」

と言う。


それから真剣な顔で2人を見て、

「本当にあなたたちのおかげですよ。

みんな感謝してる。

ありがとうございました。」


と言ってまた笑う。




「みなさんが強いからですよ。」

とレイシア言う。


それに街の人たちが笑う。




レイシアはその瞬間シギを横目で見る。

シギもレイシアを見ていて、視線だけで了解の意味を表す。


それにレイシアが口の端を上げ微笑み、シギにしかわからない程度に口を動かし、何かつぶやく。



すると突然すごい突風が吹き、路地の砂埃を巻き上げる。

それに街の人たちが驚きの声を上げながら、顔を覆う。



風が去り、みんなが目を開くと。



そこにレイシアとシギはいなかった。




ナムもミルドナの人たちも、しばらくその誰もいない場所を見つめていた。







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