zinma Ⅲ
花屋の一族
村は花の洪水、というような景色だった。
ぽつりぽつりと建つ、白い壁に煉瓦、といった家の壁には、絵の具で花の模様が描かれている。
それらの家のまわりには大きな花畑が広がり、背の高い花から小さなかわいらしい花まで、色とりどりの花が育てられていた。
家の窓枠にも花が飾られ、視界は花だらけだ。
村全体がひとつの花畑のようになっていて、かわいらしいそれらの家も飾りに見え、道も斑点模様のようなかわいらしい石畳になっている。
「…すごいですね。」
と言うレイシアの言葉に、シギも言葉を失い、うなずく。
すると、一番近くの花壇からひょっこりと男性が顔を出す。
「おや、旅人さんかい?」
それにレイシアは振り向き、微笑んで、
「はい。王都へ向かうところなんです。」
と言う。
するとしゃがんでいた男性は立ち上がり、汗を手の平で拭いながら歩いてくる。
「そうかいそうかい。
それにしても若い旅人さんだなあ。
王都に親にでもいるのかい?」
と言うので、
「いえ、ただの趣味で旅を。」
とレイシアが笑いながら答える。
それから被っていたコートのフードを2人はとり、改めて村を見回す。
花壇のところどころには、この男性のように花の世話をしている人がいる。
それを見てからレイシアは男性に、
「この村に宿はありますか?」
と聞く。
すると気のいい男性は微笑みながら、
「ああ、あるよ。
この先に4軒ほど進んだ先だ。
この村には家は15軒しか家はないから、すぐわかるだろうよ。」
と教えてくれるので、レイシアとシギは男性に礼を言うと、村を進んだ。