zinma Ⅲ
その宿屋も、白い壁に花が描かれた家だった。
レイシアは宿に入ると、
「すみません。」
と声をかける。
しかしだれも中にはいない。
それに不思議に思っていると、宿屋の裏の方からかすかに、
「はーい。」
という幼い声が聞こえる。
それに2人が宿から出て裏を覗くと、一人の少女がかけてきた。
「すみません。
庭で花の世話をしてました。」
と言いながら汗をふく少女は、10歳ほどの年齢に見える。
栗色の巻き毛をポニーテールにした、かわいらしい少女だった。
「ご宿泊ですか?」
と幼い容姿とは裏腹にしっかりした口調で話す。
レイシアは微笑んで、
「はい。部屋は空いてますか?」
と聞くと少女もにっこりと笑い、
「もちろん。どうぞ中で休んでください。」
と言ってレイシアたちを促し、自分も宿の中へかけていく。
それに着いてレイシアとシギも宿に入り、食堂らしい部屋に通され椅子に座る。
少女は手早く2人に水を渡すと、
「ではお部屋を準備しますから、少々お待ちください。」
と言って階段を上って行く。
それを見送ってから、
「彼女一人で経営しているわけではありませんよね?」
とシギがつぶやく。
レイシアは水を一口飲んで微笑むと、
「そういうわけではないようですよ。」
と言う。
それにシギがレイシアを見つめたところで、
「ルウー!ルウ!いないの?」
と呼ぶ声がしたかと思うと、一人の若い女性が食堂に入ってくる。
さっきの少女によく似た栗色の巻き毛をおろし、澄んだ碧眼をしている。
こちらはレイシアたちと同じくらいの年齢に見える。
その少女が食堂に入り、レイシアたちを目に止めると、焦ったように頭を下げる。
「あら!お客さまがいらっしゃったなんて。
失礼しました。
トクルーナへようこそ。」
それにレイシアが微笑んで、
「ありがとうございます。」
と言うので、少女もにっこりと笑う。