zinma Ⅲ
それから少女は、はたとシギに目を止める。
すると少女が途端に顔を覆い、さらに焦ったように、おろした髪を急いで束ね始める。
その少女の挙動不審な行動を不思議に思いながらも、シギは聞く。
「姉妹で宿屋を?」
それに少女が、
「えっ?ああ、はい。
2人だけでなんとか。」
と言いながら、やっと髪を縛り終わる。
そして自分が腕に持っていたバスケットを見て、
「ああ、そうでした。
お客さま、お腹すいてません?
すぐにご用意しますよ。」
と言うので、
「じゃあ、お願いします。」
とレイシアが答える。
それに少女は、かしこまりましたと言い、キッチンへと向かう。
そのとき部屋の準備に行っていた少女が降りてきて、
「姉さん!お帰りなさい。」
と言う。
「ルウ、ただいま。」
と言って、ルウと呼んだ少女に微笑む。
「ルウさん、というんですね。」
とレイシアが言うと、気づいたように姉が言う。
「ええ。
こちらが妹のルウ。
私は姉のルシールです。」
と言ってまたシギを見て、少し顔を赤くしながらキッチンに行く。
そのルシールに着いてルウもキッチンへ入っていく。
ルシールは料理を作りながら、レイシアたちに話しかける。
「お客さまのお名前、聞いてもよろしいですか?」
それに、
「はい。私はレイシアといいます。
こっちが…」
とレイシアが言い、シギが継ぐ。
「シギといいます。」
それにルシールはさらに、
「ずいぶんお若く見えるのですが、お2人ともおいくつなんですか?」
と聞く。
立ち寄る街で必ずといっていいほど聞かれる質問にレイシアは笑いながら、
「2人とも今16です。」
と答える。
それにまたいつもと同じような反応が返ってくる。
「16歳ですか?
16歳で旅だなんて。尊敬します。」
年齢を言うと、たいていの人が驚くか、感心するか、そのどちらかだった。