zinma Ⅲ



それからしばらくして、ルシールが食事を運んでくる。


暖かいスープに、パンとサラダ。
焼いた鶏肉は香草で下味がつけてあり、どれも絶品だった。



食事を片付けたころには、ルウがすっかりレイシアになつき、楽しそうに話しかけてくる。

「ねぇ、レイシアさん。」

それにレイシアが微笑んで、

「呼び捨てでかまいませんよ。」

と言うとルウはきらきらと目を輝かせ、

「ほんとに?!」

と聞く。


それにルシールが、

「こら、ルウ。」

と言い、ルウが少し残念な顔をする。


「いいんです。」

とレイシアがルシールに言い、ルシールがそれなら、とルウを見てうなずく。

それにまたルウが嬉しそうに飛び跳ねながら、

「やったあ!ね、ね、レイシア。
庭を見に来ない?
あたしたちが一生懸命育ててるの!」

と、レイシアの手を握って言う。

「じゃあ、お言葉に甘えて。」

とレイシアが言うとまたルウは喜び、レイシアの手を引いて外へ出ていく。


そのレイシアにルシールが頭を下げ、レイシアはそれに片手だけで答えると、ルウといっしょに外に行った。




部屋にはルシールとシギだけが取り残される。

それにルシールが一瞬戸惑うような顔をするが、また笑顔に戻り、

「お部屋に案内しましょうか?
お荷物持ちますね。」

とシギに言うので、

「いや、荷物は私が。」

と、シギがレイシアの分の荷物も軽々と持ち上げる。


思わず、

「すごいですね。」

とルシールがこぼすと、シギは薄く微笑み、

「男ですから、一応。」

と言う。


それにルシールも小さく笑い、部屋へ案内した。







部屋にもたくさんの花が飾られていて、部屋の中は花の香につつまれていた。

シギは、部屋へ入り荷物を置く。

そしてコートを置くと、レイシアがコートを脱がないままで出て行ったことに気づき、部屋の窓から下を見る。


それにルシールが、

「どうかしました?」

と言うので、

「いえ、師匠のコートを…」

とまで言う。




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