zinma Ⅲ
窓の外は庭に面していて、レイシアとルウが花を見てはしゃぐのが見える。
「師匠!」
と呼ぶと、レイシアはすぐにシギのほうを見る。
「コート、投げてください。」
と言うと、レイシアは、ああ、と言った顔でコートを見て、脱ぐ。
そしてコートをくるくるとまるめると、シギのほうへと投げる。
シギはそれを受け取り、部屋にかける。
それを見て、ルシールが小さく笑う。
「ほんとに仲がよろしいんですね。」
それにシギは驚いたように振り向き、
「そう見えるんですか?」
と言うので、それにまたルシールは笑い、
「ええ、とても。」
と言う。
シギはしばらく感心するような顔をしてから、ふっと笑う。
「まあ、いっしょに旅をしてますからね。しょうがないことです。」
シギはまた窓際に寄り、外をながめる。
「村を案内しましょうか?」
その声にシギが振り向くと、ルシールがはっと口を手でおさえ、顔を赤くする。
「あ、あの、いえ、つい……。
その……よろしかったら……。」
それにシギは微笑み、
「ありがたいです。
師匠とは違って私は外の世界に疎いので…。
ぜひ、お願いします。」
と言った。
「この村には、民家は15軒しか建っていないんですが、トクルーナの土地の広さはこの北方地方の街のなかでも特に大きいほうなんです。」
ルシールが説明をしながら、シギを街に案内する。
「その土地のほとんどは花畑になっていて、どの季節も欠かすことなく花が咲いているんです。」
そこでルシールとシギはある大きな花畑に入る。
背の高い葉の生い茂る木に、かわいらしい花がたくさん生えている。
甘いお菓子のような香が、まわりに立ち込めている。
「……良い香ですね…」
思わずシギが言うと、ルシールは心底うれしそうな顔をする。
「でしょう!この花はトクルーナの人たちが特別に改良した花で、この花を育てているのもトクルーナだけなんです。
王都でも一番売れ行きがいい花です。」