zinma Ⅲ
そうして花について語るルシールはとても楽しそうな顔をしていて、それを見てシギはふっと微笑む。
それに気づいてルシールは顔を赤くし、両手で頬を覆う。
「あ、私ったら……つい……」
それにシギは小さく笑うと、
「いえ、良いことではありませんか。
花が好きなんですね。」
と言う。
それにまだ顔を赤くしたルシールは、照れたように微笑みながら言う。
「ええ。小さいころから花の世話をしながら育ったんです。
毎年毎年同じことの繰り返しですけど、毎年その季節の花を楽しみにして生活して。
この街に産まれてよかったと思います。」
ルシールはトクルーナの特産だという花を触る。
薄いピンク色の小さな花びらがいくつも重なった、小さなバラのような花。
「これ、1輪摘んでもいいですか?」
シギが突然そう聞くので少し驚きながら、
「え?ええ、もちろん…」
とルシールが答えると、シギは壊れ物を扱うように、優しくその花を摘む。
「この花の名前は?」
またルシールにそう聞くと、
「ルシールっていうんです。
この花の開発に成功したときに私が産まれたので、私はこの名前をもらったんですよ。」
とルシールが微笑む。
それにシギもやわらかく微笑み返し、
「そうだったんですか。
ルシール、というんですね。」
と言い、花を見つめる。
それにまたルシールはなぜか顔を赤らめる。
そのとき、ぱちん、という音とともに、ルシールの髪をまとめていた紐がちぎれる。
「あっ。」
とルシールが小さく言ったときには、すでにルシールの栗色の巻き毛がふわりと肩に降りる。
「あら、どうしよう。」
と言って、少し焦りながらルシールが自分の髪を触る。
その顔を一度見つめてから、シギはルシールの髪へと手をのばす。
「え?」
と言って焦るルシールをよそに、シギはルシールの髪を触る。