zinma Ⅲ
そしてルシールの栗色の髪を片耳にかける。
さらにさっき摘んだルシールの花を、その髪にさす。
それから手を離し、
「この花、なんとなくあなたに似ていると思っていました。」
と言って、シギは微笑む。
そのシギの顔をルシールはしばらく驚いたように見つめると、みるみるうちに顔を赤くさせていく。
「………えっ?!
えっと………
あ、ありがとうございます。」
と言って、うつむく。
そのルシールを見て、
「どうしました?」
と言う。
しかしルシールはうつむいたまま両手を振り、
「いえ、なんでもないんです。
えっと………行きましょうか。」
と言って、顔をそらすようにして花畑を進んでいった。
シギはそれに不思議な顔をするが、すぐにルシールに着いて行った。
そのあとも2人はゆっくりと村中の花畑を見てまわった。
村の人たちにも、ぽつりぽつりと出会い、少し立ち話をしたりして、ゆったりとした時間を過ごした。
それはずっと旅をし続けてきたシギにとって、久しぶりの平穏だった。
気づくともう日が沈み始め、村はオレンジ色の光につつまれていた。
「そろそろ戻りましょう。」
そのシギの言葉に少しルシールは寂しさを感じながら、
「そうですね。」
と頷いた。
宿に戻ると、レイシアとルウが食堂で待っていた。
「姉さん!遅いよー。
お腹すいちゃった。」
とルウが言い、レイシアは
「お帰りなさい。」
と微笑んだ。
「遅くなってごめんなさい。
すぐにご飯を作るわ。」
とルシールは言い、キッチンへと入った。
シギはレイシアの隣に座り、ふたりでいろいろと話し始める。
シギはいつもの無表情で話し、それをレイシアがにこにこと聞く、といった光景。
それを見て微笑み、ルシールは食事を用意し始めた。