zinma Ⅲ
シギとレイシアは部屋で休んでいた。
部屋に備え付けられた2つのベッドにそれぞれ座り、ゆったりとすごしていた。
シギはベッドの上で静かに座禅を組んで、目を閉じて瞑想している。
レイシアはベッドに横になり、ずっと持ち歩いている本を読んでいる。
その本には、この世界中の街に関する歴史や地形や文化などが詳しく記述されており、それで毎日レイシアは勉強していた。
その中で、ぽつりぽつりとふたりは会話をする。
シギが目を閉じたまま、口を開く。
「師匠。」
レイシアも本を読む体勢のまま、答える。
「なんです?」
「トクルーナにはどのくらい滞在するんですか?」
それにレイシアは一度本を自分の胸の上に起き、天井を見上げ、
「んー、そうですね………」
と言って、しばらく考えこむ。
シギはそれを瞑想しながら静かに待つ。
しばらくしてレイシアが目を開き天井を見たまま、答える。
「3日。」
「3日?」
シギは目を開け、おもわず驚いてそう聞く。
レイシアはいつも1つの街に長い間とどまることはない。
『選ばれしヒト』の力はいつもレイシアを侵し、蝕む。
さらに『呪い』はミルドナの街がそうだったように、暴走することがある。
そのときはたくさんの人が死んでしまう。
それを防ぐためにも、レイシアは歩みを止めることはないのだ。
そのレイシアが………
「3日もここに?」
またシギがそう聞くと、そのシギの驚いた声に小さく笑いながら、
「ええ。
このトクルーナを出れば、1日も歩けば王都です。
王都からはそれこそもうゆっくりしていられることはなくなるでしょう。」
と言う。
それにシギは真剣な顔でレイシアを見る。
レイシアが天井を見たまま続ける。
「ここトクルーナが最後の安息の場です。
ゆっくり休んで、十分魔力を蓄えておいてください。
ここは花に囲まれていますから、より清く強い魔力が得られるでしょう。」