zinma Ⅲ



そう言ってからレイシアは急に軽い口調になり、シギに目を向ける。


「ああ、そうそう。
ひとつあなたに言い忘れていたことがありまして。」


それにシギもなんでもない様子で、

「言い忘れたこと?なんですか?」

と聞く。



それにレイシアがにこにこと微笑みながら言う。



「王都で十分情報を仕入れて、王都を出るときですが……

『選ばれしヒト』の力、使いますね。」





それにシギははっとしてレイシアを見る。


いまレイシアが言ったことは全く軽い話ではないのだ。


『選ばれしヒト』は、吸収した『呪い』の能力を自分のものとして使うことができる。

小さな『呪い』はともかくとして、レイシアはすでに、

身体能力を上げる力、『飛躍』
『呪い』の気配を消す力、『隠身』
すべての物の時を止める力、『制止』
広い範囲を感知できる力、『万感』
結界によって周りを拒絶する力、『拒絶』

を手に入れている。



レイシアは『隠身』よって、いつも『選ばれしヒト』のオーラを消しているが、そのほかの『呪い』は一切使わない。

なぜなら、リスクが高すぎるからだ。



『選ばれしヒト』がその強大になっていく力を使うことの代償は、その命だ。

レイシアは『呪い』の力を使う度に、その命を削られている。


力によって気配を消しているレイシアは、今この瞬間も、命を失っていくのだ。


世界に散らばったすべての『呪い』を回収するには、元は人間の身体である『選ばれしヒト』には身体の器が小さすぎるため、すべて集めきる前に身体が壊れる可能性が高い。

それなのにさらに力を使って命を削るのは、かなりのリスクがある。



「……本当に、力を使うんですか?」




シギがそう聞き返すが、


「はい。」


とレイシアが即答する。


「それは、わかってやるんですね?」


と聞くと、レイシアは小さく笑いながら、


「もちろん。」


と答える。





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