zinma Ⅲ
「あんたらみたいな男前にお墨付きをもらったら百人力だなあ。」
と言って主人がまた豪快に笑う。
すると食堂にいた常連の商人らしい他の客が声を上げる。
「ナムちゃんは心配いらねぇだろう。
この街でも評判の美人なんだからよ。」
それに他の客も賛成の声をあげるので、ナムは顔を赤くして照れるのを我慢し、
「みなさんありがとう。
でもあたしはお世辞なんかに揺らがないからね。」
と言っておどけると、客も大声で笑いはじめる。
赤い顔を紛らわそうと、旅人2人の皿を片付けながら、
「荷物運びましょうか?」
とナムが聞くと、
「いえ、重いですから。
部屋に案内だけしていただけますか?」
と言う青年の顔をなるべく見ないようにしながら、ナムはうなずく。
部屋まで案内すると、2人はコートを脱ぎ、荷物を置いた。
「何かご用がありましたら、食堂のほうにいますから。」
とだけ言って、ナムは部屋をあとにした。
その後も客と両親と談笑をしていると、しばらくして2人が食堂へ入ってきた。
厚手のコートや装備でわからなかったが、簡単な服に着替えたふたりは引き締まった細身の身体をしており、それに少し酒を飲んだ客のひとりが口笛を吹き、
「男前のお出ましだ!」
と言うので、周りの客も盛り上がる。
それに金髪の青年が微笑を返し、夫人に話しかける。
「少し出かけますね。」
それに夫人が、
「でもこの街のことわからないだろう?
ここは裏通りとかで入り組んでるからねぇ。」
と言って、「ナム!」と呼ぶ。
それにナムが駆け寄ると、
「お客さんに街を案内してあげな。」
と言う。
ナムが反応するより早く、金髪の青年が、
「悪いですよ。
道なら歩くうちにわかりますから。」
と言う。しかし夫人が、
「遠慮なんかしないでいいよ。
昼も過ぎてあとは夜まで暇なんだから。」
と言うので、青年が遠慮がちにナムを見る。
その青年にナムは微笑み、
「任せてくださいな。」
と言った。