zinma Ⅲ



「師匠。どういう……?」

とシギが聞くと、レイシアは微笑みながら、

「朝トクルーナの村の周りを散歩してましたら、たまたまトーヤさんの馬車がやって来るのが見えたんですよ。

そこから話していたらすっかり意気投合しちゃいまして。

その後は流れで店の準備を。」

と答える。


それにトーヤも豪快に笑いながら、

「はっはっは。
ほんとに驚いたよ!

トクルーナの村の近くの森から突然人が出てくるもんだから、思わず身がすくんでねぇ。

でもやたら綺麗な奴が出てきたから天使か何かだと思っちまった!」

それにレイシアは少し困った顔をして、


「だからそれは大袈裟ですって。
朝だから雰囲気に惑わされてそんな風に見えたんですよ。」


と言って、またトーヤとはしゃぐ。



それを呆然と見ていたシギとルシールは顔を見合わせ、小さく笑う。



「ほら見ろ。やっぱりお似合いじゃないか。」



という声がするのでそっちを見ると、いつの間にかこっちを見ていたトーヤがうんうんとうなずき、にやにやと笑っている。

それにレイシアもいつものように微笑みながら、


「たしかに。お似合いですねぇ。」

と言う。



それにルシールがまた赤くなりながら、

「えぇ!レイシアさんまで…」

と言って両手で頬をおさおる。



それにレイシアとトーヤが笑うと、


「まあ冗談もここらへんにして、ルシール。
今日は何がほしいんだい?」

とトーヤが聞く。


まだ顔の赤いルシールは少し落ち着くように息をついて、

「そうねぇ。
とりあえず……」

と言って買い物をはじめた。



それをレイシアがにこにこ見守っているので、

「いつ散歩へ?というより本当に散歩だったんですか?」

とシギが聞く。


レイシアはシギのほうを振り向き、

「もちろん散歩ではありませんよ。
実は昨夜は寝てないんです。」

と答える。




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