zinma Ⅲ



それにシギは真剣な顔になり、

「師匠……」

と言う。


それにレイシアはなんの曇りもない笑顔で、

「大丈夫ですよ。」

と答える。



まだ旅は始まったばかりなのに、レイシアにはもう『選ばれしヒト』の副作用が出ているのだ。

血が騒ぐのだろう。


「痛みは……」

とシギが聞くと、

「ありませんよ。
というより、痛むのかもしれませんが、わかりません。
もう、麻痺しているので。」

とレイシアは答える。

「ただ変に脈が上がって、私の中の『呪い』が暴れるんですよ。
また黒い血管が浮き上がるんです。」


そう言ってまたルシールたちのやり取りを微笑んで見る。



ミルドナの街で見た、レイシアの姿。


血管がすごい大きさで脈打ち、その血管が炭よりも真っ黒に染まっていた。

思い出すだけで身震いしてしまうほど、不気味な光景だった。



「そんな顔しないでください。
もう治まりましたし、いつもの話です。」




そこでルシールの買い物が終わったらしい。

「私たちの花はまだもう少しかかりますから、来週渡ししますね。」

そう言ってルシールはお金を払う。


「ああ、楽しみにしているよ。」

とトーヤは答え、3人は宿に戻った。


その道中、シギはルシールの持っているバスケットをひょいと取り上げると、

「持ちますよ。」

と言う。


それにルシールは少し顔を赤らめ嬉しそうに微笑み、

「ありがとうございます。」

と言う。


その2人を見て、レイシアは薄く微笑んだ。






3人が宿に戻ると、一人で番をしていたルウがレイシアに駆けより、

「おかえりなさい!
レイシアもおはよう!」

と言う。


レイシアがにこにことそれに答えていると、

「レイシアさん、朝食食べられますよね?」

とルシールが荷物をシギから受け取りながら、聞く。


「いえ、実は店の準備を手伝っているときにトーヤさんからパンをいただきまして。」


と答える。




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