zinma Ⅲ
ルシールはそれに、
「それならよかったです。
では私は庭にいるので、何かありましたら呼んでくださいね。」
と言って、庭仕事の道具を持ってルウといっしょに庭へ出て行った。
それを2人で見送ると、
「すてきな女性ですね。」
レイシアが突然そう言うので、シギは無表情のままレイシアを見る。
「ここに残ってもいいんですよ?」
そう言ってレイシアは微笑む。
「師匠、何を言っ……」
「断る理由はないでしょう?」
シギの言葉を遮ってレイシアは続ける。
「トーヤさんが言うように、あなたとルシールさんはお似合いですよ。
おそらく彼女もあなたに好意を持っています。
ここにいれば必ず幸せになれる。
わざわざ暗い道を歩む必要はないじゃありませんか。
あなたは輝きを持っています。
他者を引き付けるなにかを。
輝くものは明るい道を歩くのが道理というものです。違いますか?」
それにシギは黙ったまま、レイシアを見つめている。
そのシギの反応にレイシアは微笑む。
「ここに残り、彼女と幸せに暮らすというのが誰から見ても正しい選択なんです。
決意を曲げるということも、時には必要なんです。恥ではない。」
そこまで言ってレイシアは窓から外を見る。
美しい花畑が広がり、蝶々がひらひらと待っている。
晴れた空から降り注ぐ明るい太陽をあび、景色はまぶしいくらい輝いていた。
絵に描いたような、平和。
風にゆれる花のこすれる音しかしない、静寂。
その中で、澄んだレイシアの声だけがやけに響く。
「3日後。ここを発つとき、答えを聞きます。
ゆっくり、考えてください。」
そう言ってレイシアは振り向き微笑むと、階段を上って部屋に消えた。
シギはしばらくじっとたたずんでいたが、
「幸せ、か………」
とつぶやくと、外へ出て行った。