zinma Ⅲ
ひとまず大通りへ出ようと、宿の前の通りを歩きながら、ナムが聞く。
「そういえば、お名前教えていただけません?」
すると金髪の青年が、
「あ、すみません。
レイシアです。
レイシア・リールと言います。」
と言って微笑む。
長髪の青年も、軽く頭を下げて、
「シギ・サンです。」
と言う。
それからレイシアと名乗った青年が、
「あなたは、ナムさん、ですよね?」
と言うので、ナムは少し照れたように微笑みながらうなずく。
「ええ。
シギさんは名前からするとこの辺りの出身なんですか?」
それにシギはうなずき、
「はい。クル山脈の辺りの集落から。」
と言う。
確かに着ている服が北の民の刺繍と似ているので、納得する。
「ずいぶん寒いところからいらしたんですね。
レイシアさんはこの辺りでは聞かない名前ですけど…」
そう言うとレイシアはうなずき、
「ええ、この辺り出身ではないんです。」
と言って、それ以上は言おうとしないので、ナムもそれ以上は聞かない。
客の事情に首をつっこまないのは宿商売の基本なのだ。
「じゃあシギさんがいっしょに旅をするようになったのも、ほんとに最近なんですねぇ。」
と言うと、シギが口を開く。
「そうですね。
たまたま私の村に来たこの人に、私が無理矢理着いて来たんです。」
と言うので、ナムは笑いながら、
「そうなんですか。
ずいぶん慕われてますね。」
とレイシアに言うと、レイシアも困ったように微笑みながら、
「ほんとに、なぜでしょうね。」
と言う。
レイシアが笑った時、首にかけている黄緑色の石が光に反射し輝く。
「きれいな石ですね。」
ナムの言葉に、レイシアはやわらかく微笑んだ。
そこでやっと大通りに出る。
いつものように、様々な屋台が並び、たくさんの商人や旅人でごったがえしていた。
「目的とかはおありですか?」
とナムが聞くと、
「そうですね…。
とりあえず旅に役立つものを探して、あとは酒場に行きます。」
とレイシアが答える。