zinma Ⅲ



「それって、レイシアの宝物なの?」


そう聞くルウをレイシアは優しげに微笑んで見つめると、


「………ええ。
とても……大切なものです。」

と言って、優しく石を握る。


「だれかからもらったの?」


それにレイシアはまだあどけない顔のルウを見つめ、昔見た少女に姿を重ねる。


「……はい。ずいぶん昔に。」



ルウはそれに、ふーん、と言い、レイシアに背中を向けごそごそと何かし始める。


レイシアはその背中を見つめながら待っていると、しばらくしてルウがレイシアに振り向く。


「はい!」


と言って差し出したルウの手には、花でできた小さな指輪がある。

「じゃあ私からはこれあげる!」


そう言ってレイシアの手をとり、右手の人差し指にはめる。

それからさらにレイシアの手を優しく両手で包むと、

「あのね、この指輪はきっとすぐ枯れちゃうと思うけど、私がレイシアに元気でいてっていうおまじないはこの指に残ると思うの。」

と言う。



それからレイシアを見上げ、

「レイシアはまた旅に出ちゃうんでしょ?」

それにレイシアは優しく微笑んでうなずく。

「シギさんも?」


それにレイシアは少し眉をよせてから、

「それは彼が決めることですが…
彼はきっと来るでしょうね。」

と言う。


「そっか。」

とルウは言って少し黙り、



「でもまたトクルーナに帰ってきてね。」



と言って明るく笑う。



それにレイシアは…




「そのときはシギはあなたのお兄さんになるかもしれませんね。」


と微笑む。

するとまたルウの顔がぱっと輝き、

「レイシアもそう思う?
お似合いだもんねー!」

と言ってはしゃぎ始める。




それを見つめレイシアは微笑んでから、もう二度と見ることのないであろうこの村を、目に焼き付けた。




< 65 / 364 >

この作品をシェア

pagetop