zinma Ⅲ

3日間の恋





シギとルシールは村を出ると、少し森を歩いた。

小鳥を見つけてはシギがその名前をルシールに教え、花を見つけてはルシールがシギに教えた。


そうしてしばらく歩くと、突然甘い香りがただよってきた。



それを不思議に思い、2人はその方向へ歩く。


するとそこには、




真っ白な花畑が広がっていた。





「わあ………」

「すごいですね……」


思わず2人はつぶやく。


視界が雪のように完全に白で埋めつくされていた。

膝の高さくらいの花が咲き乱れている。


ルシールは花畑に近寄りしゃがんで花をのぞく。

「これは…トクルーナの花ですね。」


シギも近寄ってしゃがみながら、

「トクルーナ?」

と聞く。

トクルーナの花は、花というより綿毛のようなふわふわしたものでできていた。



ルシールは、シギを見つめて答える。


「はい。トクルーナ。
この村の象徴になってる花です。

この村を作ったご先祖さまがこの地に来たときに、広いトクルーナの花畑を見つけたから、この花に村と同じトクルーナという名前が付いたんですよ。」


そして花を見つめ優しく触れると、


「村を開拓したときに花畑はなくなったと聞いていましたが、こんなところにも残っていたんですね。」


と言って微笑む。



シギはその優しい微笑みに、つられて微笑む。

するとルシールは突然立ち上がり、花畑へと走って入っていく。


するとそのあとを真っ白な綿毛が巻き上がる。


それを呆然とシギが見ていると、ルシールが笑いながらシギを呼ぶ。


「シギさん!!シギさんもやってみてくださいよ!すごく楽しいですから!」


そう言ってルシールが手招きするので、シギは立ち上がる。

思いっきり、花畑を駆ける。


また綿毛が立ち上り、本当に雪が降っているようにシギの周りを綿毛が舞う。

その真っ白な視界の向こうで、ルシールが楽しそうに笑っている。



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