zinma Ⅲ
それからルシールは自分の髪に綿毛が絡まっているのに気づくと、まとめていた髪をほどく。
すると突然突風が吹き、舞っていた綿毛がさらに強く横へ縦へ舞う。
それに髪をなびかせながら、また楽しそうにルシールが笑う。
その綿毛が激しく舞う中で、ルシールはさらに花畑を走り回る。
シギもそれに微笑んで、ルシールのほうへ駆ける。
2人が駆け回り、さらに吹きつづける突風によって、視界は真っ白になり、ほとんど前が見えなくなる。
すると突然何かにぶつかり、シギは倒れる。
倒れてまた綿毛が舞い上がる中で、隣を見ると、ルシールも倒れている。
どうやらルシールにぶつかり、倒れてしまったようだ。
「大丈夫ですか?」
と聞くと、花畑から顔を上げたルシールは頬が高揚するほど楽しそうに笑う。
「私、全然前が見えなくなってました。」
それにシギも笑い、
「私もです。それにしても、すごいですね。」
と言い、空を見上げる。
駆け回っていたときほどではなくとも、まだ空を雪のように綿毛が舞っている。
シギはそのまま花畑に寝転がり、その様子を見上げる。
ルシールもそれを見て、同じように寝転がる。
しばらく2人とも無言で空を見上げていると、ルシールがふふっと笑う。
シギがそれにルシールのほうを見ると、ルシールはまた楽しそうな笑顔で言う。
「こんなにはしゃぎまわったの、久しぶりです。
我ながら、子供みたいでしたね。」
それにシギも小さく笑い、
「私は、こんなに笑ったのも産まれて初めてです。
笑って息が苦しくなるなんて、思ってもみなかった。」
と言う。
それにルシールが仰向けだった身体をシギのほうへ向け、言う。
「そんな、もったいないですよ。
せっかくの人生なんだから、笑わないと。」
それにシギはルシールの目を見つめ、ふわりと微笑み、
「…そうですね。
これからは、そうします。」
と答える。
ルシールもそれにうれしそうに微笑む。