zinma Ⅲ
「酒場ですか?」
と驚いて思わずナムが聞く。
王都のキニエラ族では、13歳が成人とされており、13からはとりあえず飲酒が認められている。
だが多くの民族の間では、18までは飲酒の量を制限しているところが多い。
それにレイシアは、
「ああ、違いますよ。お酒は飲みません。
酒場に行って情報を集めようかと。」
と言って微笑む。
それにナムはこのあたりで一番たくさんの人が集まる酒場のある路地へ案内しながら聞く。
「たいてい酒場で情報収集されるんですか?」
レイシアはそれにうなずき、
「はい。酒場に集まる人はいろいろな人がいますから。
変な話、酒場では裏の情報に長けた人も簡単に見つかりますからね。
旅をするうえで各地の情報を知らないということは命取り。
情報は常に手に入れるようにしているんですよ。」
と言う。それにナムが感心していると、そのうちに酒場の前に着く。
酒場からは昼間だというのに大きな笑い声がドアの外まで響き、時折ふらふらと客が出てくる。
2階は安い宿になっているらしく、いくつかの部屋があるようだ。
それにレイシアは、平和な街に危ない人間がいるとは考えられないけど、女性が入る場所ではない、と言ってナムに外で待つように言った。
酒場に入って行った2人は、始めはその整った容姿から酔っ払いに絡まれていて、2人がドアの向こうに消えたあともナムははらはらとしていたのだが、騒ぎが元に戻ったことからすると、どうやら上手くいったらしい。
それに安堵の息をつき、しばらく路地の壁にもたれて待っていると、シギがひとりだけ酒場から出てくる。
「何かあったんです?」
とナムが聞くと、
「いえ、師匠は情報屋を見つけられたので。
しばらく話を聞くからナムさんの傍に着いていろとのことです。
女性を酒場の前の路地に放っておくわけにはいけませんから。」
とシギが答える。
それにナムが正直ひとりは不安だったので素直に礼を言うと、シギはやわらかく微笑む。