zinma Ⅲ



「師匠が村にやって来て、両親のことを聞いて、決めたんだ。

両親の誇り高い生き方を受け継ぐために、師匠に着いて行くことを、決めた。」



それからルシールを見て微笑み、

「僕の容姿はほとんど母さん譲りらしいよ。この髪も、顔立ちも。
瞳の色だけは、父さんなんだってさ。」


と言う。



ルシールはその凛としたシギの笑顔に微笑みを返してから、言う。

「シギさんは…強いね。
シギさんのご両親も、きっとシギさんのことを誇りに思ってるよ。」


それにシギはルシールを見つめ、言う。


「それはルシールも同じじゃないか。

ルシールのご両親の死に方は、正直気持ちの良いものじゃない。

でもルシールからは影が感じられないんだよ。

暖かい雰囲気しか伝わってこない。」



それにルシールは少し照れたような顔をしてから、

「…そうかな。
でも、本当に両親の死に方を引きずったりはしてないの。

とても悲しいし、悔しかったけど…

恨んでもしょうがないもの。

それに2人が残してくれた宿と、花畑を大切にすることで、いつまでもいっしょにいられる気がする。」


それにシギはしばらく黙り、自分の手を握る。


「どうしたの?」


とルシールがシギを見るので、シギはルシールを見て微笑むと、ルシールの頭に手をのばす。

そしてふわりと、優しくルシールの頭をなでる。


それにルシールが顔を真っ赤にするが、気にせず言う。


「…ルシールに会えて、本当によかった。

ルシールは僕を変えた。

ほんとに、感謝してる。」


それからルシールの顔をのぞきこみ、

「だからルシールも…
今いっしょにいれる間に、辛いことは辛いって言って。

今なら、そばで聞いてあげられる。」


と言う。

それにルシールは恥ずかしそうに目をふせたかと思うと、ぽろりと一筋の涙を流す。


それにあわてて、

「あ……えっと……
ち、ちがうの。シギさんの言葉が、あんまりにうれしくて……」

と言うが、それを遮るようにシギはルシールの肩を引き寄せる。




< 70 / 364 >

この作品をシェア

pagetop