zinma Ⅲ
「師匠が村にやって来て、両親のことを聞いて、決めたんだ。
両親の誇り高い生き方を受け継ぐために、師匠に着いて行くことを、決めた。」
それからルシールを見て微笑み、
「僕の容姿はほとんど母さん譲りらしいよ。この髪も、顔立ちも。
瞳の色だけは、父さんなんだってさ。」
と言う。
ルシールはその凛としたシギの笑顔に微笑みを返してから、言う。
「シギさんは…強いね。
シギさんのご両親も、きっとシギさんのことを誇りに思ってるよ。」
それにシギはルシールを見つめ、言う。
「それはルシールも同じじゃないか。
ルシールのご両親の死に方は、正直気持ちの良いものじゃない。
でもルシールからは影が感じられないんだよ。
暖かい雰囲気しか伝わってこない。」
それにルシールは少し照れたような顔をしてから、
「…そうかな。
でも、本当に両親の死に方を引きずったりはしてないの。
とても悲しいし、悔しかったけど…
恨んでもしょうがないもの。
それに2人が残してくれた宿と、花畑を大切にすることで、いつまでもいっしょにいられる気がする。」
それにシギはしばらく黙り、自分の手を握る。
「どうしたの?」
とルシールがシギを見るので、シギはルシールを見て微笑むと、ルシールの頭に手をのばす。
そしてふわりと、優しくルシールの頭をなでる。
それにルシールが顔を真っ赤にするが、気にせず言う。
「…ルシールに会えて、本当によかった。
ルシールは僕を変えた。
ほんとに、感謝してる。」
それからルシールの顔をのぞきこみ、
「だからルシールも…
今いっしょにいれる間に、辛いことは辛いって言って。
今なら、そばで聞いてあげられる。」
と言う。
それにルシールは恥ずかしそうに目をふせたかと思うと、ぽろりと一筋の涙を流す。
それにあわてて、
「あ……えっと……
ち、ちがうの。シギさんの言葉が、あんまりにうれしくて……」
と言うが、それを遮るようにシギはルシールの肩を引き寄せる。