zinma Ⅲ
「ああ、ルシール。おはよう。」
と言ってから、シギは大きくのびをする。
「こんなにぐっすり寝たのは初めてだ。
いつもは寝起きは良いほうなんだけど。
今は起きる気にならない…」
と言ってまたうとうととし始めるので、ルシールは笑いながらシギの肩を軽く叩き、
「寝かしてあげたいけど、だめよ。
もう夕方なんだから。
帰らないとレイシアさんとルウが待ってる。」
と言う。
それにまたシギは半分目を開き、
「夕方?ああ、本当だ。」
と、いま気づいたように夕日を見て、身体を起こす。
あぐらをかいてまた大きくのびをすると、
「んー。じゃあ戻ろうか。」
と言う。
それにルシールも起き上がり、立つ。
シギの真似をして大きく伸びをし、
「良く寝たなあ!
すごく気持ちよかったー。」
と言い、まだ座ったままのシギの方を振り向く。
「シギさん。本当にありがとう。
すごく身体が軽くなった気がします。」
するとシギはふわりと微笑み、
「どういたしまして。」
と答え、立ち上がる。
そしてバスケットを持ち数歩トクルーナの花畑を歩くと、振り向きルシールを見る。
「明日も…また出かけないか?」
これ以上ないくらい優しい微笑みで聞くシギにルシールは照れ笑いを浮かべ、
「……はい。私でよかったら。」
と答え、シギのあとを追った。
宿ではレイシアとルウがまたじゃれ合い、シギたちを待っていた。
4人で夕食を食べ、談笑してからそれぞれが部屋に戻っていく。
ルシールは部屋に戻り、また昨日のように3色の糸を持ってベッドに座る。
今日と昨日のことを考えるとなんだか頭が冴えてしまって眠れそうになかった。
ルシールはキッチンへ行き温かい紅茶を作ると、部屋に持って行きそれを飲む。
シギが出て行くのは、明後日。
いっしょにいられるのは明日だけだ。
それを考え、ルシールはまた糸を手に取った。