zinma Ⅲ
翌朝。なんとなく早く目が覚めたシギは、またレイシアのベッドが空になっているのを見て、まだ青白い早朝の村へと出た。
ところどころの花畑では、すでに庭仕事をしている村人がちらちらと姿を見せている。
この3日間で、村人はもうシギのことを覚えてくれたようで、静かに朝のあいさつをしてくれる。
その村人たちにあいさつを返しながら、シギは村を出た。
村を出ると、シギは『共鳴』をしてレイシアの場所を探った。
トーヤがトクルーナに来る街道の途中でレイシアと出会ったと言っていたので、街道近くの森へ行ってみる。
やはりレイシアはこの森にいるらしく、奥から膨大な量の魔力が感じられる。
レイシアを『共鳴』で見ると目がつぶれそうになるので、シギは方向だけ確認すると、『共鳴』を解く。
森の奥に、レイシアはいた。
いつものように湖を捜し当てたらしく、また湖にいた。
湖に入り、中心のあたりで立っていた。
微動だにしないところを見ると、瞑想しているのだろう。
邪魔をしてはいけないと思い、その場を立ち去ろうとすると、振り返った先の地面が盛り上がり、壁を作る。
その壁を『共鳴』をして見つめると、シギよりも少し大きな女性が壁の前に立っていた。
女神だ。
今度の女神は茶色の魔力の粒でできていて、短髪の勝ち気な女性。
その女神がシギの行く先をはばむので、『共鳴』を解きレイシアのほうを見る。
するといつの間にかこっちを見て右手をシギのほうに向けていたレイシアが、手を下ろして言う。
「何か用ですか?」
それにシギはうなずき、
「まだ身体に異変が?」
と聞く。
それにレイシアは一度微笑んでから、左手腕の袖をめくる。
そしてレイシアの色白の腕の内側をシギのほうへ向けた。
そこには遠くからでもはっきりとわかるほど真っ黒な血管が浮かび上がっていて。