zinma Ⅲ
「これは『選ばれしヒト』の意識であり私の意識でもあるので、言わせてもらいますが…
はっきり言って、私は人がいくら死のうと気にならない。
所詮、人はいつか死ぬんです。
ではなぜ人は人が死ぬのを嫌がるのか。
それは人が優しいから。悲しむから。
でも私には感情がない。
まったく残っていないんですよ。
人が死んでも。まわりから人が消えても。
私は笑えるんですよ。」
レイシアはずっと笑っている。
「その私にあなたはこれから着いて来なくてはいけない。
でも決めたんでしょう?
もう来ると決めたんでしょう?
ならば行きましょう。
暗闇を集めるだけの旅に。
進めば進むほど暗闇にはまっていく旅に。」
そしてレイシアはシギに手を差し出す。
シギはその、人間にしか見えない目の前の化け物を見つめ、手を取った。
2人が宿に戻ると、もうルシールとルウが朝食の準備をしていた。
「おはようございます。
お2人で出かけられてたんですね。」
ルシールがそう言うと、レイシアはにっこりと微笑んで答える。
「はい。良い天気でしたので。」
そのレイシアにルウがかけより、手を引いてテーブルへと連れていく。
それを見ていると、
「おはようございます、シギさん。」
とルシールが言う。
それにシギはルシールを見て微笑み、
「おはよう、ルシール。」
と言う。
テーブルにつき、運ばれてくる朝食を4人で食べる。
「姉さんたちは今日も出かけるでしょ?」
そう聞くルウに、シギはパンを食べながらうなずく。
それにルウはにっこり笑い、
「楽しんできてね!」
と言う。
シギはそれに微笑み、
「ありがとうございます。」
と言う。
ルシールはというと、顔を赤らめうつむき、ぎこちない動きで朝食を片付けている。
レイシアはそれを、だれよりも優しい顔で微笑んで見ていた。