zinma Ⅲ
それにシギは少し心配そうな顔をしてから、
「ルシール。」
と呼ぶ。
それにルシールがシギのほうを見ると、ルシールの身体が突然ふわりと浮き上がる。
「えっ?!」
ルシールはいつの間にかシギに抱き上げられていて、シギは器用にルシールを自分の背中に乗せる。
おんぶをされるような状態にルシールが目を白黒させていると、
「なかなか丘に着かないな。」
と言いながらシギは歩き始める。
「えっ?!ちょっとシギさん!
重いから降ろしてくださいっ。」
と言うが、シギは頭だけ振り返りルシールを見て、
「いいから、大人しくして。
重くないし、平気。」
と言う。
それにルシールは大人しくなり、シギの背中に身体を任せる。
ちょっとふて腐れたまま、
「力持ちなのね。」
と言うルシールにシギは笑い、
「それほどでも。」
とおどける。
ルシールもそのシギに思わず吹き出し、2人は笑いながら森を進んだ。
丘の手前でルシールはシギから降り、2人で駆け回りながら丘を登る。
笑いながら登ったおかげで、丘のてっぺんに着いたときには2人とも倒れるように草原に膝をついた。
「あはは、は、はは。はあー…
も、う…動けない……」
ルシールがそう言って草原にねっころがると、シギもその隣で仰向けになる。
「はあ、はあ…
ほんとに、疲れた……」
しばらく息が整うまで、2人は無言で空を見上げた。
「こんなに高いところに来たの、初めて。」
ぽつりと言うルシールに、シギが顔を向ける。
「いつもトクルーナと王都の城下町にしかいなかったから。
空が、近いね……」
と言ってルシールは空に手を伸ばす。
それにシギは立ち上がる。
ルシールに手を差し出し、
「立って。」
と言う。
ルシールはその手をとりながら、
「なに?」
と聞くが、シギはルシールをふわりと引っ張り上げながら、
「秘密。」
と言った。